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2024.01.18
Web担当者になったら知っておきたい運用の基本 ビギナーガイド

Webアクセシビリティとは?法改正への対応について

2024年4月1日に障害者差別解消法の改正法が施行されます。それにあたりWebアクセシビリティへの対応が注目を集めています。
本記事では、Webアクセシビリティとは何か、その背景と企業が取り組むべき課題を明確にして、解決するためのポイントを解説します。

Webアクセシビリティとは

Webアクセシビリティとは、Webサイトやオンラインツールが、『障害の有無や年齢・身体的条件に関わらず、すべてのユーザーが使いやすく、必要な情報にアクセスできること』を意味します。
これは、Webがすべてのユーザーに平等に開かれているべきという理念に基づいており、特に障害を持つユーザーが情報やサービスにアクセスする際の障壁を取り除くことを目的としています。
たとえば、視覚障害があるユーザーにも読みやすいWebサイトのデザイン、聴覚障害のあるユーザーが動画の内容を理解できるような字幕の提供などが含まれます。これにより、障害のあるユーザーだけでなく、高齢者や技術に不慣れなユーザーも含め、より多くのユーザーがインターネットを利用できるようになります。

アクセシビリティは多くの障害特性や利用状況を把握して向上・対応する必要がありますが、ひとつ一つの利用状況を網羅して把握することは困難です。
そのため、網羅的に確認された上で体系立てられた世界で標準的に使われているガイドラインのWCAGと、その一致規格の JIS規格を使うことをデジタル庁の『ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック』では求めています。

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)

WCAGは、国際的なガイドラインで、Webコンテンツをすべてのユーザーが利用しやすくするためのものです。
このガイドラインは、「知覚可能」「操作可能」「理解可能」「堅牢」という4つの原則に基づいています。これらの原則は、Webサイトがすべてのユーザーにとって利用しやすくなるように設計されています。
さらに、WCAGはA、AA、AAAの3つのアクセシビリティレベルを定義しています。これにより、Webサイトやアプリケーションがどの程度アクセスしやすいかを測定する基準が提供されます。
WCAGを遵守することは、法的義務を果たすだけでなく、すべてのユーザーがサービスを利用するためにも重要です。

JIS X 8341-3

JIS X 8341-3は、日本国内でのWebアクセシビリティに特化したガイドラインです。
情報通信における高齢者・障がい者のアクセシビリティ指針として、日本のユーザーが直面する可能性のある障害を理解し、対処するための具体的なアドバイスを提供しています。
このガイドラインに従うことで、Webデザイナーや開発者は、より多くのユーザーがアクセス可能なデジタル製品やサービスを提供することができます。特に、日本市場をターゲットにしたWebサイトやアプリケーションにおいて、ガイドラインの遵守が重要です。
Webアクセシビリティの改善は、技術的な問題だけでなく、社会的な責任でもあります。
JIS X 8341-3は、日本におけるWebアクセシビリティの基準を設定し、よりアクセスしやすいデジタル環境を実現するのに役立っています。

総務省Webアクセシビリティ方針

総務省は、政府のWebサイトがすべての市民にとって利用しやすくなるように、特別な方針を設けています。この方針の目的は、政府の提供する情報が透明でアクセスしやすい状態を保証することです。これにより、すべての市民が、必要な政府情報に平等にアクセスできるようになります。

障がい者差別解消法の改正法について

障がい者差別解消法は、障害を持つ人々が社会の様々な場面で差別されないように保護するための法律です。
この法律は障がい者の権利を保護し、社会的な障害を解消することを目的としています。
Webアクセシビリティの分野においてこの法律は特に重要で、障害を持つユーザーがデジタル環境においても平等にアクセスし、参加できるようにするための基盤として重要な意味を持ちます。

法律の歴史

この法律は2013年6月に制定され、2016年4月1日から施行されました。
企業や公共機関は、障害を持つユーザーに対する合理的配慮の提供を義務付けられています。
合理的配慮とは、障害の種類や程度に応じた個別のニーズに配慮することを意味します。これには、障害を持つユーザーへの物理的なアクセスの改善、通信ツールの提供、情報提供方法の調整などが含まれます。
法律では、企業や公共機関に対して、障害を持つユーザーがサービスや施設を利用する際に直面する可能性のある障害に対する理解を深め、必要な支援を適切に提供する責任があると定められています。

2024年の改正内容

2024年4月の改正では、特にWebアクセシビリティに関する合理的配慮の基準が明確化されました。
Webサイトやモバイルアプリの設計において、障害を持つユーザーのニーズをより考慮することが強調されました。。
これにより、デジタルコンテンツの利便性が向上し、障害を持つユーザーにとっても使いやすい環境が整うことが期待されています。

訴訟リスクに対する備え

法改正によりWebアクセシビリティに対応していない場合、法的な問題や訴訟リスクが高まります。
特に、障害を持つユーザーがWebサイトやサービスへのアクセスが困難な場合、企業や組織はアクセシビリティの対応が求められ、場合によっては訴訟に直面する可能性があります。
米国ではいち早くADA法(障害を持つアメリカ人法)によって障がい者の権利が守られており、ウェブサイトやアプリも対象となるとの判断が下されています。近年、米国ではアクセシビリティに関する訴訟件数が大幅に増え、企業にとってアクセシビリティへの対応は必須になっています。

Webアクセシビリティ訴訟の具体例

Webアクセシビリティに関する訴訟は、企業がデジタル環境でのアクセシビリティに十分な注意を払わないと、法的な責任を負う可能性があることを示しています。以下は、そのような事例の一部です。

ドミノ・ピザ

2019年9月、ドミノ・ピザは、自社のWebサイトとモバイルアプリが視覚障がい者にとってアクセスしにくいとして訴訟されました。
訴訟のポイントとして、スクリーンリーダー(画面の文字を読み上げるソフト)を使用しての操作が困難であることが問題視されました。
連邦地裁は障がい者の男性の訴えを認め、ドミノ・ピザに対して同社のウェブサイトをウェブアクセシビリティに対応させること、原告の男性に4,000ドルの損害賠償を支払うことを命じました。
この訴訟は、企業がWebアクセシビリティに対する法的責任を負うことを示す重要な事例として注目され、WebサイトやアプリがWCAGなどの国際基準に準拠することの重要性を浮き彫りにしました。

ビヨンセ・ノウルズ(パーク・エンターテインメント)

2019年1月、歌手ビヨンセの公式Webサイトが、視覚障がい者にとってアクセスしにくいとして視覚障害を抱えているファンからニューヨーク州南部連邦地方裁判所に訴状が提出されました。
この訴状には、Webサイト画像の代替テキストが不足していることや、ドロップダウンメニューやナビゲーションボタンが利用できないなど多くの問題が指摘されています。
この事例は、一人のアーティストであってもWebアクセシビリティが重要であることを示しています。

これらの事例からも、Webアクセシビリティへの非対応が企業や組織にとって重大なリスクをもたらすことがわかります。これからは日本においても国際基準に準拠し、障害を持つユーザーのニーズに応えるための施策が不可欠だと言えます。

このような訴訟リスクを減らすためには、法的要件に合わせてWebサイトのアクセシビリティを定期的に評価し、必要な改善を行うことが重要です。

Webアクセシビリティの評価と監査

Webアクセシビリティの評価と監査は、定期的に行うことが重要です。
アクセシビリティチェックツールなどを利用して、Webサイトやアプリケーションのアクセシビリティを定期的に評価し、WCAGなどの基準に準拠しているかを確認・改善します。
よくある問題点として、代替テキストやラベルの不足、空のリンク、冗長なリンク、ページタイトルの欠如などがあります。

透明性の維持

アクセシビリティへの取り組みについて、Webサイト上で明確に情報を提供します。アクセシビリティ声明の公開や、問題への対応状況を定期的に更新することが重要です。

教育と意識向上

従業員や関係者に対し、Webアクセシビリティの重要性と基本原則についての教育を行います。これにより、アクセシビリティを意識したWebデザインと開発が促進されます。

Webサイトに関する訴訟は、Webアクセシビリティが単に利便性の問題ではなく、法的な責任と密接に関連していることを示しています。
企業や組織は、Webアクセシビリティの基準に準拠することにより、訴訟リスクを減らすだけでなく、より多くのユーザーにサービスを提供することができます。

Webアクセシビリティ方針の策定と公開

Webアクセシビリティ方針の策定と公開に関しては、以下の手順を踏むことが推奨されます。

方針策定

方針策定の際には、特定の障害を持つユーザーへのアクセシビリティの向上や、特定の機能の改善など、具体的な目標を定めます。
国際的な基準であるWCAGや、国内基準のJIS X 8341-3などを参考にし、適用する基準を選びます。
アクセシビリティのレベルはA、AA、AAAの3段階に分かれており、基本レベルのA、中間レベルのAA、最高レベルのAAAの中から、目指すアクセシビリティのレベルを決めます。

JIS X 8341-3:2016 達成早見表(レベルA & AA)

日本におけるWebアクセシビリティの標準を示します。
JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表(レベル A & AA)
出典:ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC) 作『JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表(レベルA & AA)』(https://waic.jp/)

WCAG 2.1早見表(レベルA & AA)

国際的なWebアクセシビリティ基準であるWCAG 2.1の要件をまとめたものです。

1.1.1 非テキストコンテンツの達成基準 [A]
1.2.1 音声だけ及び映像だけ(収録済み)の達成基準 [A]
1.2.2 キャプション(収録済み)の達成基準 [A]
1.2.3 音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準 [A]
1.2.4 キャプション(ライブ)の達成基準 [AA]
1.2.5 音声解説(収録済み)の達成基準 [AA]
1.3.1 情報及び関係性の達成基準 [A]
1.3.2 意味のある順序の達成基準 [A]
1.3.3 感覚的な特徴の達成基準 [A]
1.4.1 色の使用の達成基準 [A]
1.4.2 音声の制御の達成基準 [A]
1.4.3 コントラスト(最低限レベル)の達成基準 [AA]
1.4.4 テキストのサイズ変更の達成基準 [AA]
1.4.5 文字画像の達成基準 [AA]
2.1.1 キーボードの達成基準 [A]
2.1.2 キーボードトラップなしの達成基準 [A]
2.2.1 タイミング調整可能の達成基準 [A]
2.2.2 一時停止,停止及び非表示の達成基準 [A]
2.3.1 3 回の閃光、又は閾値以下の達成基準 [A]
2.4.1 ブロックスキップの達成基準 [A]
2.4.2 ページタイトルの達成基準 [A]
2.4.3 フォーカス順序の達成基準 [A]
2.4.4 リンクの目的(コンテキスト内)の達成基準 [A]
2.4.5 複数の手段の達成基準 [AA]
2.4.6 見出し及びラベルの達成基準 [AA]
2.4.7 フォーカスの可視化の達成基準 [AA]
3.1.1 ページの言語の達成基準 [A]
3.1.2 一部分の言語の達成基準 [AA]
3.2.1 フォーカス時の達成基準 [AA]
3.2.2 入力時の達成基準 [AA]
3.2.3 一貫したナビゲーションの達成基準 [AA]
3.2.4 一貫した識別性の達成基準 [AA]
3.3.1 エラーの特定の達成基準 [A]
3.3.2 ラベル又は説明の達成基準 [A]
3.3.3 エラー修正の提案の達成基準 [AA]
3.3.4 エラー回避(法的,金融及びデータ)の達成基準 [AA]
4.1.1 構文解析の達成基準 [A]
4.1.2 名前(name),役割(role)及び値(value)の達成基準 [A]

方針の公開

策定したWebアクセシビリティ方針は、Webサイト上で公開することが推奨されています。
これにより、ユーザーは、企業や組織がWebアクセシビリティにどのように取り組んでいるかを理解することができます。また、方針の透明性を高めることでユーザーからの信頼を得ることにもつながります。

継続的な管理

策定したWebアクセシビリティ方針を適切に維持するためには、Webサイトとそのコンテンツを継続的に管理し、技術の進歩やユーザーのニーズの変化に合わせて適宜更新することが重要です。これにより、常に現代的かつ効果的であり、すべてのユーザーに対して最高水準のアクセシビリティを提供することができます。
これにより、企業は社会的責任を果たし、幅広い顧客層にアクセス可能となります。

まとめ

Webアクセシビリティは、障害を持つ人たちだけでなく様々なユーザーにとってもWebサイトの利便性を高めるために欠かせません。画像が正しくキャプションされているか、音声が正しく読み上げられているか、動画の説明文章が用意されているか、テキストの文字のサイズや色は適切かなど、様々な目線で確認することが大切です。
企業にとっては訴訟リスクを回避するだけでなく、多くのユーザーをターゲットにすることができ、信頼性向上につながって社会的責任を果たすことができるなど数多くのメリットがあります。
今後も重要性が高まっていくと思われるWebアクセシビリティへの対応を、今こそ本格的に取り組み始めてはいかがでしょうか。
株式会社シーズではWebサイトの現状調査から、Webアクセシビリティ対応のための取り組み、Webサイトの改修、品質維持などをワンストップで支援しています。
Webアクセシビリティへの対応について課題をお持ちの際は、こちらからお気軽にお問い合わせください。

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