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同じWebサイトを開いているはずなのに、パソコンとスマートフォンでレイアウトが違っていたり、文字の太さや余白の取り方が微妙にズレて見えたりすることがあります。
何かおかしいのでは?と感じるかもしれませんが、こうした違いは、必ずしも不具合とは限りません。
実は、Webの仕組みや閲覧環境の違い、あるいはデザイン上の意図によって、見た目が変わることはよくあります。
本記事では、そうした見た目の違いはなぜ起きるのか、それをどこまで気にすべきなのかについて、解説します。
見た目の違いには意味がある
見た目が違って見える原因には、いくつかのタイプがあります。自然に起こるものもあれば、あえて変えているものもあります。ここでは、そういった違いがなぜ起こるのか、その背景を整理してみます。
制御が難しいもの(環境依存)
どれだけ丁寧に設計しても、OSやブラウザ、端末側の描画処理やハードウェアの違い、ユーザーの個別設定によって発生する差は、制作者からは調整ができません。
例えば、フォントの見え方には環境ごとの違いが出やすく、全く同じ指定をしていても、Windowsとmac、ChromeとSafariなどで、フォントの太さや輪郭のにじみ、シャープさなどが微妙に異なることがあります。各OSやブラウザで使用されているフォントレンダリングエンジンが異なることによるもので、コントロールできない領域です。


macOSでは文字がやや太く、画像の塗りが繊細に表示されています。Windowsではフォントが細めで、画像の塗りがしっかりしていますが、線がわずかににじんで見えます。
また、モニターの種類や明るさ、発色傾向によっては、同じ色でもかなり印象が変わることがあります。加えて、解像度や画素の密度、表示のシャープさといった部分も見た目の違いに大きく影響します。
さらに、ユーザー自身が設定している文字サイズの拡大、ハイコントラスト表示、配色の変更なども見た目に影響を与えます。これらはアクセシビリティの観点からも重要で、制作側がむやみに上書きするべきではありません。
こうした環境依存による差は、Webという仕組み上避けられないものであり、制御することはできません。
調整はできるが完全には揃わないもの(環境による誤差)
完全に制御できない領域がある一方で、ある程度なら調整できる違いもあります。
Webサイトは、さまざまな端末やブラウザで見られるため、少しのずれはどうしても出てしまいます。
例えば、同じ指定でも、余白の取り方や画像の位置、文字の詰まり具合、アイコンのズレなど、細かな違いが生まれることがあります。

FirefoxとChromeでテキストの上下の余白にわずかな差が生じています。補助線を見るとその違いがわかります。
こうした違いは、ブラウザやOSの仕様や描画エンジンの違いによって自然に発生するものです。制作側でも、スタイルの調整やカスタマイズによって、見た目の差が出にくくなるよう工夫していますが、それでもすべてを完全に一致させるのは難しいのが現実です。
意図的に変えているもの(レスポンシブ対応)
ここまで紹介したものとは異なり、最初から環境に合わせて、あえて見た目を変えるよう設計されているケースもあります。
これはレスポンシブデザインによるもので、画面サイズや端末に応じて、より使いやすくなるように見た目を意図的に変えています。
例えば、スマートフォンでWebサイトを開いたとき、パソコンでは横並びだった画像が縦に並び替えられるのは、画面の狭いスマートフォンでも無理なく読めるようにするための配慮です。


パソコンでは横並びだったコンテンツが、スマートフォンでは画面幅に合わせて縦並びに切り替わっています。
他にも、パソコンではナビゲーションメニューが画面上部に常時表示されているのに、スマートフォンではアイコンをタップすると開く形式になっていたり、指で押しやすいようにボタンのサイズや間隔が広めに取られていたりすることもあります。
これらは、一見するとパソコンとスマートフォンで全然違う画面が表示されているように感じられるかもしれませんが、制作者がそれぞれの環境に合わせて、より使いやすくなるように設計した結果です。
ここまで紹介してきたように、見た目の違いにはいくつかの原因があります。本文では触れきれなかった点も含めて、環境によって制御が難しいもの・ある程度制御できるものをまとめておきます。
制御が難しいもの
・輪郭や線の見え方(太さ・にじみ・シャープさ)
・モニターの明るさ・コントラスト・色味
・解像度やdpiによる画像のぼやけ・サイズの違い
・アニメーションの滑らかさ
・ユーザーの個別設定(文字拡大・ダークモードなど)
・絵文字やカーソルの形などシステムによってデザインが違うもの
多少の誤差はあってもある程度制御できるもの
・行間・文字間
・上下左右の余白
・画像やアイコンなどの縦位置のズレ
見た目の違いはどこまで気にすべきか
見た目の違いが生じる理由をここまで紹介してきましたが、ではそれをどこまで気にするべきなのでしょうか。
実は、Webサイトの見た目は、やろうと思えばかなり細かい部分まで揃えることができます。実際、制作の現場でも、表示のバラつきを減らすためにスタイルの初期化や細かい調整などが行われています。
とはいえ、すべてを完全に揃えることはあまり現実的ではありません。
環境によるズレを無理に潰そうとすると、かえって別の問題を引き起こすこともあります。
ある環境での表示崩れを直すために加えた調整が、別の環境ではレイアウトが崩れる原因になることがあります。また、ユーザーがアクセシビリティにために設定した文字サイズや配色を、見た目を揃える目的で上書きしてしまうと、読みづらくなる可能性もあります。
このように、見た目を揃えることを優先しすぎると、本来重視すべき使いやすさや読みやすさが損なわれることがあります。多少見た目が違ったとしても、読める・使える・違和感がないという条件を満たしていれば、それ以上の調整は必ずしも必要ではありません。
実際、端末によって文字サイズが違ったり、ボタンの位置や余白、レイアウトに差があったとしても、コンテンツが読めて機能が正しく使えるのであれば、多くのユーザーにとっては気にならない程度の違いです。同じページを見ていても、環境ごとの細かな違いに気づく人は少なく、仮に気づいたとしても、それが操作や閲覧に支障がなければ気にされることはほとんどありません。
大事なのは、すべての環境で完全に見た目を一致させることではなく、どの環境でもきちんと使えることです。多少の違いはあっても、多くのユーザーが違和感なく使えていればそこまで気にする必要はありません。
まとめ
Webサイトの見た目が端末やブラウザによって少しずつ違って見えるのは、Webという仕組み上、どうしても避けられないことです。
その背景には、OSやブラウザ、モニター、ユーザー設定といった環境の違いによるものや、各ブラウザの描画の癖、さらにレスポンシブデザインなど、あえて環境に合わせて変えているものがあります。
すべての環境でまったく同じ見た目にそろえるのは現実的ではありませんし、それを無理にやろうとすると、かえって使いづらくなってしまうこともあります。
大事なのは、読める、使える、違和感がないことです。
多少の違いがあっても、それがユーザーの操作や理解に影響を与えないなら、過度に気にする必要はありません。
ただ、もし違和感がある・操作しにくい・読みにくいと感じる場合は、相談してみてください。どう対応するのがいいか一緒に考えていきましょう。